四国の玄関口として知られている香川県。
本州と四国をつなぐ瀬戸大橋は有名であるが、実は瀬戸大橋の下を観光できる島があり、しかも公共バスでしか行けない穴場スポットがあることはまだあまり知られていません。
今回の記事では、香川県坂出市にあるちょっと変わった瀬戸内海の島について紹介します。
バスでしか入ることのできない坂出市の島とは?
通常、公共交通機関でしか入れない坂出市にある瀬戸内海の島の名前は、与島(よしま)・岩黒島(いわくろじま)・櫃石島(ひついしじま)です。
どうして公共バスでしか入れないかというと、この3島には「島民カード」を持ってる住民しか入れない独自の文化があります。
与島・岩黒島・櫃石島はそれぞれ高速道路の降り口にはなっていますが高速道路のカードを通すゲートは別に、島民専用のゲートというものが存在します。
その為、一般車両では島に入ることができません。
しかし、島の外から与島・岩黒島・櫃石島へ通勤通学する人がいるので、現在は公共バスでしか入れない島となっています。
それでは次に与島・岩黒島・櫃石島それぞれの特徴について説明していきます。
与島(よしま)
与島は現在、高速道路のパーキングエリアとなっています。
なので与島だけは、公共バスでなくても立ち寄ることができますが、車で島の中まで行くことはできません。
与島はどういう島だったか簡単に説明すると、人名(にんみょう)というコミュニティーと、塩業・採石業・海運業で栄えた島です。
人名とは、戦国時代後半にできた政府や幕府に属さない独自の組織です。
昔は年貢を幕府や所属する藩に納めていましたが、与島では人名の文化だったので年貢を納める必要がなく、自分たちで稼いだものは自分たちで好きなように使えていました。
江戸時代以降は塩田開発による塩の産業、花崗岩の石が採れることから採石場として石の産業ができました。
地元のガイドさんに聞いてみると、与島で採れた石は大阪城でも使われていたそうです。
またそれに伴い、与島で採れた塩や岩を船で運ぶ海運業もあり、瀬戸大橋ができるまでは坂出~与島間を行き来する千當丸という定期便が地元の人々の交通手段として活躍してしていました。
しかしその後は近代化による産業の廃止、瀬戸大橋開通による島民の流出や定期便の需要減などで与島は少しずつ衰退していったそうです。
与島の見どころ① 歴史的価値のある鍋島灯台
それでは次に個人的におすすめしたい与島のおすすめスポットを紹介します。
最初に紹介したいのが、青空をバックにとても写真映えする鍋島灯台。
150年以上の歴史がある灯台で、2022年には国の重要文化財にも指定されました。
路線バスで行く際は「浦城」というバスで降りたらスグに白い灯台が見えてきます。
インスタ映えするような写真を撮りたいカップルや女子旅では一番のおすすめスポットです。
与島の見どころ② ループ状になっている高速道路
路線バスで乗っていると、らせん状になった道路をぐるぐる回って与島内に入っていきます。
そのループ状になっている道路を下から見上げるとこんな景色が楽しめ、このループ橋を見れるのは日本でも数少ないのでないでしょうか。
与島の見どころ③ 今も残る歴史の産物
与島を支えた塩業・採石業・海運業。
かつて塩田だった場所は既に道路になっていて言われないとわからないですが、採石や海運業の名残をは今でも残っていて見ることができます。
こちらの写真に写っている井戸のフタになっているギザギザの円盤状のものは、石切りカッターの刃の部分で
下の写真は瀬戸大橋開通前に与島と坂出をつないでいた定期便「千當丸」をたたえる石碑
下の写真は、与島の人名を伝えるための石碑など、与島の歴史を継承して伝えるものがたくさんありました。
与島の見どころ④ いろんな角度から楽しめる瀬戸大橋
与島から見る瀬戸大橋は、実は3つの角度から見ることができます。
1つは与島パーキングエリアからです。
SAKAIDEというモニュメントがあるので、ここで写真を撮るのが定番になりつつあります。
(※SAKAIDEのモニュメントは2023年9月時点ではなくなってしまったそうです)
2つ目は、下から見上げる瀬戸大橋。
こちらは路線バスで行く方、与島パーキングエリアに立ち寄る方どちらでも見ることができます。
パーキングエリアから行く人はSAKAIDEのモニュメントの後ろに歩いていくと、写真のような場所が見えてきます。
そのまま進んでいくと与島内に入っていけるんですが、途中に瀬戸大橋の真下を通る場所があるので、そこから瀬戸大橋の裏側を見ることができます。
3つめは、瀬戸大橋の塔頂部に登って、瀬戸大橋から見下ろす景色です。
岡山方面と香川方面2つの景色が見れるので個人的にはココが一番の絶景です。
1枚目は香川方面を撮った写真で
2枚目は岡山方面を撮影したものです。
ただし、瀬戸大橋に塔頂できるのはツアーだけとなっています。
ツアー実施日は不定期となっていますが、気になる人は本四高速のコチラから確認してみてください。
岩黒島(いわくろじま)
次に紹介するのは、岩黒島。
岩黒島は漁業で栄えた島で、釣り好きな人にとってはちょっとした釣りスポットにもなっています。
そして旅系Youtuberの方が動画にしたことでもバズった岩黒島のことについて紹介します。
岩黒島の見どころ① エレベーターでしか上陸できない
ユーチューブの動画でもいくつか上がってますが、岩黒島は「エレベーターでしか上陸できない島」です。
公共のバスで行く場合は、岩黒島というバス停で下車していきます。
坂出駅からバスに乗った場合は、高速道路のところで下車し、トンネルみたいな通路を通って反対側にあるエレベーターに乗って島の中に入っていきます。
ここでもらせん状の道路の写真が撮れる写真スポットです。
岩黒島の見どころ② 他とはちょっと違う家のつくり
島を散策していると、岩黒島の住居は他の地域と違う点があるのがわかりました。
それは地面から少し高い位置に家が建っているということです。
家が高いとこに立っている理由を地元のガイドさんに聞いてみたら、これは海が荒れたりした際に浸水しないための高潮対策だそうで、話を聞いて納得しました。
岩黒島の見どころ③ 巨大なセミのアート
岩黒島は、クマゼミの島としても認知されていて、夏のシーズンにはセミの鳴く声が島中に響き渡ります。
そして島の中にある岩黒小中学校の建物には大きなクマゼミのアートが描かれています。
これは岩黒島がクマゼミの生態研究で日本一になったこと、「クマゼミの本」という書籍化されたことを島全体で祝うために描かれた島の人たちの思いが込められたアートになっています。
青色・緑色・黒色で描かれているクマゼミもなんかかわいらしく、岩黒島の写真スポットの1つです。
尚、岡山から香川方面に行く際の電車や車の窓からもクマゼミの絵は見れるので、瀬戸大橋を渡る際はぜひ見てみてください。
岩黒島の見どころ④ 3種類の色に変わる地質
岩黒島は名前の通り岩が黒く、他の島とはちょっと違う地質になっています。
さきほど紹介した与島は採石の島でしたが、岩黒島は「土の島」と呼ばれています。
ビーチの近くにある地層を見ると、黒色・黄色・赤色と3種類の色に分かれていますが、実はもともと全て同じ石でできているんです。
どうして色が変わっているかというと、答えは風化や酸化の具合によるものです。
最初は黒い地層から始まり、風化が進んでいくことで黄色に変わり、さらに酸化していくことで赤色に変わってやわらかい粘土質の土になるそうです。
実際に赤い地層をさわってみたら簡単に砕ける土になっていて、赤土の部分は瓦の材料として使われていました。
櫃石島(ひついしじま)
櫃石島は与島と同じ花崗岩の島であるが漁業として栄えた島で、島の中には歴史や文化がつまっています。
学校の教科書にもでてくる咸臨丸に櫃石島から35人乗船していたり、文化財にもなっている井戸などもありました。
櫃石島の見どころ① 巨大なキイキ岩
櫃石島の中に王子神社があり、境内の中に特徴的な巨大な岩があります。
島民からは守り神として信仰されており、櫃石島の豊かさや成長を象徴する岩として地元の人からは親しまれています。
昔はここまで大きくなかったなんですが、不思議なことに岩がどんどん大きくなっていき、その時に「キイキイ」と音がなっていたことから、キイキ岩と呼ばれるようになりました。
写真ではなかなか伝わりにくいんですが、実際に見てみると本当にデカイので、なかなか迫力があります。
櫃石島の見どころ② 日本画鑑賞できるアトリエ校舎
廃校になった小学校をアーティスト活動の拠点としている福王寺一彦さんのアトリエが櫃石島にあります。
正直あまり教えたくはないのですが、櫃石島の新しい穴場な観光スポットで、アートが好きな人はおすすめできます。
福王寺さんの絵の特徴を一言で表すと「青」。
青を題材にした日本画がアトリエ内に展示されていて、ひとことに青と言っても淡い青から深い青までとにかくいろんな青に触れることができます。
そしてデザインするときに使う塗料は岩絵具を使用していて、岩を砕く作業もご自身でされるほどで、その時に使う道具なども見ることができます。
また展示品の中には、実際に手で触ったりすることもできます。
一般的には絵画作品は触ってはいけないというイメージを持っている人が多いと思います。
しかし福王寺さんの意向で、目で見るだけでなく、触れることでもアートを楽しんでほしいということなので、櫃石島でしかできない体験がここにあります。
福王寺一彦さんのアトリエ兼美術館は、「ひついし福王寺・夢・アートスタジオ日本画展」という名前で、毎月第3日曜日の9時~13時にオープンしていて、なんと無料で楽しめます。
興味のある方は櫃石島に行く前にコチラで確認するようにしてください。
実はもうひとつ紹介したい秘境の島
ここまでは公共バスでしか行けない瀬戸内海の島を紹介しましたが、実はもうひとつ紹介したい島があります。
それは与島の港から船で5分ほどでいける、小与島(こよしま)。
小与島は与島と同じく採石場として栄えた島で、切った後の岩が島のシンボルにもなっていて、ナゾに満ちた秘境感あふれる離島。
「ポツンと一軒家」というメディアにも取り上げられたこともあり、小与島には1世帯しか住んでいません。
2023年現在、小与島に行く定期便がないので、小与島に行きたい方は岡山県の下津井エリアにある「たい公望」に問い合わせてみてください。
与島・岩黒島・櫃石島に行くときの注意点
次に与島・岩黒島・櫃石島・(小与島)に行くときの注意点について説明します。
食べ物・飲み物は持参必須
与島に関してはパーキングエリアでご飯を食べたり飲み物を買えますが、島の中に入ったら食べものや飲み物を買える場所はありません。(岩黒島では島内に1つだけ自販機があるのを2023年9月に確認しました)。
その為、与島パーキングエリアによらない場合は坂出駅もしくは岡山県の児島駅で食料や飲み物を買える最後のチャンスになります。
特に夏場に行く際には、最低でも1.5リットル以上の飲み物を用意することをおすすめします。
(30度を超える9月に行った際は30代男性の私にとっては1.5Lでは足りず、駅に着くまで少しガマンすることになりました)
バスの最終時刻を必ずチェック
坂出駅~児島駅をつなぐ路線バスは1日5便しかありません(土日祝と年末年始は1便減ります)
その為、バスに乗り過ごすと帰れなくなるので、島での滞在時間やバス停までの移動時間などを事前に計画しておくのがベストです。
尚、バスの時刻表は琴参バスのコチラのサイトからご確認ください。
まとめ
一般車両では入れない他の島とはちょっと違う島与島・岩黒島・櫃石島。
坂出市民の中でも瀬戸大橋の下にある島に行ったことがある人はそんなに多くありません。
「島に行く」というのは何故かワクワクし、海なし県の人や海に馴染みのない人はさらにテンションがあがる場所です。
香川県に旅行や観光で行く際は、バスで島に行ってみるのはいかがでしょうか。
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